百合子、ダスヴィダーニヤ―湯浅芳子の青春

百合子、ダスヴィダーニヤ―湯浅芳子の青春


GLとしての湯浅芳子中条百合子の,ソ連・欧州にまで至る愛と別れの記録。

芳子は母のような悲しい女の人生を選ばず,どちらかといえば自分のエゴを押し通した父を,自分の生き方のモデルとした。……芳子は男との関わりでは泣かない女である。涙を流す代わりに,彼女は怒りを表明した。だが,女との関わりにはなかなかそれができなかった。少女がひとり立ちするには,いつか必ず母を裏切らなくてはならないと言われる。……芳子は母を裏切ることができなかった。どんなに悪ぶっても,結局のところ女を裏切れない。心底愛してしまう。それが芳子の人生であった。

自分たちの生活はただ女と女が愛し合って暮していたのではない。とにかく,二人には互いにないものをおぎない合い,助け合い,高め合って暮していた。……自分にとって彼女が如何にかえがたい存在であったか,と云うことが今ハッキリと分って来た。……彼女と暮していたのは暮せていたのは,彼女が女であったからではない。そこには性をはなれたもの,彼女が彼女であったが故に暮せたのだ。

というような部分が面白かった。