江戸川乱歩久生十蘭夢野久作を思わせる小説群。

「セメント樽の…」は名古屋セメント、恵那山が見えるんだって。

「淫売婦」は救心の原料の生肝を取られる話ではなくて、レイプAVさながらの凌辱エログロ。しかし、娼婦とそのヒモに思えた関係が友愛の如きものに変わるのは凄い。

「労働者の…」は北海道から三池を経てフィリピンに向かう船。プロレタリアは鰹節じゃね〜コレラ船はニッポンの象徴である。

「天の…」囚人ほど天気を苦にするものはあるまい。監獄に演歌師の歌が痛快に響き渡る。

「人間肥料」プロレタリアの解放なんかという考えはケシ飛んでしまって、グロテスクな作風を好む作家って、自嘲気味。不具の研究会参加者は水木しげるの漫画みたい。

「窮鼠」人道というものは、銀座尾張町の交叉点におけるがようには、車道とハッキリ区別されてはいないのだった、とまあ、こういうブラックユーモアの才能はあるし。

「裸の命」死刑の方法が文化的になり芸術的になり、美の極致にまで発展したとすれば、文化とは一体何だ! 21世紀まで継続された問い。

「安ホテル…」は読むのがツライ。

敗戦の年に満州で死んだが、もし戦後を生き延びていたら、どんな作品をものしただろうか?