道草 (新潮文庫)

道草 (新潮文庫)

 

 ふむ,こりゃ私小説だわな。延々,金や子供や夫婦間の隙間風が綴られ,相当に退屈。当時の風俗,東京の地理,知識階級の孤独?なんてのは多少参考になった。「男性に対する観念をその数人から抽象して健三の所へ持って来た彼女は,全く予期と反対した一個の男を,彼女の夫に於て見出した。…無論彼女の眼には自分の父の方が正しい男の代表者の如くに見えた。…今にこの夫が世間から教育されて,自分の父のように,型が変って行くに違ないという確信を有っていた。…健三は又自分を認めない細君を忌々しく感じた。一刻な彼は遠慮なく彼女を眼下に見下す態度を公けにして憚らなかった」なんて感覚は夫婦生活の経験の無い者にもよく解る。ってか,漱石って2男5女の父だったってを初めて知ったわ(汗) 「御役人をしている間は相場師の方で儲けさせて呉れるんですって。…一旦役を退くと,もう相場師が構って呉れないから,みんな駄目になるんだそうです」☆★