痴人の愛 (新潮文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

 

 実はこれを読むのは初めてかもしれない。中学生時代に買って寝かせておいたのかな? ある程度年をとらないと、解らない部分も多いものである。

おお、最初は奈緒美は女中や小鳥扱いの積りだったのね。エイゴや音楽やダンスを教えて、上流女性へと調教する…はずが、肉体だけがエロくなり、媚態を覚え、逆に支配されてしまう。うん、ラノベにありがちなやつかな? 目黒の亜米利加人オールドミス・ハリソン先生、伊皿子の亡命露西亜人シュレムスカヤ先生。鎌倉が既に上流階級の淑女たちの遊戯場となっている。

まだチークダンスが下品であった時代。しかし、貢いだ挙句の破滅願望はやっぱロマンですわ。ナオミって当時はハイカラな名前だったのだな>私らの子供の頃には既にクラスに必ず一人は居たものだが。

なかなかの名文ぞろい。でも、冗長だなー。

男の獣性が盲目的に降伏することを強い、女は自分に肉体が男にとっては抵抗し難い蠱惑であることを知り、これは彼女にとっての堕落であって、私の堕落でもあった。

男の憎しみがかかればかかる程美しくなる。憎らしさが底の知れない美しさに変わっていく。彼女の顔にあんな妖艶な表情が溢れたところを一度も見たことがない。彼女の体と魂とが持つ悉くの美が、最高潮の形に於いて発揚された姿なのだ。