谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)

谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)

 

 「柳湯の事件」コレはエグい(^_^;)  同棲相手をいたぶる芸術家崩れの男が満員の銭湯の湯船で彼女の屍体を見つけてしまうという不可思議さ。しかし,彼女は実際は死んでおらず,男が逮捕されるのは湯船で一人の男の急所を掴んで死に至らしめたからなのだと←おいおい!!

「途上」よくある未必の故意っぽいなお話だが,「プロバビリティー」だの「ポシビリティー」だのといった生硬な直訳語(というかエイゴをカタカナに置き換えただけ)がまさか谷崎の小説に登場するとゎ思わなんだ。

「私」盗人猛々しいというか,出自決定論というか,何とも殺伐としたお話だが,純情な一高生の男の涙の友情には,濃厚に同性愛嗜好が感じられる。

「白昼鬼語」これぞマゾ谷崎の面目躍如w 恐るべき殺人鬼で美しい魔女で素晴らしい怪美人で妄想の世界に巣を喰っていた鬼で絶え間なく恋焦がれていた幻>女優の天分ということですよ。節穴から覗く目眩く殺人現場で貴方も被害者になれる…ハハ,こりゃまるでアングラ芝居そのものだわ。最高だね! しかし,殺人現場として山の手でなく,向島とか水天宮裏とかが選ばれているのは,大正期の谷崎の実感なのだろうか?と少し気になった。

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