荷風文学みちしるべ (岩波現代文庫)

奥野信太郎なる中国文学者は初めて知ったのだが、結構オモロイなあ。

「後年の荷風の作品から麻布や神楽坂や富士見町や江東の情趣を詳細に知り得るように、明治30~40年代の根岸や根津界隈の情趣を知ることはできない代りに、たとい天災があっても永久変ることのないであろうこの国土の夕暮の雨の脚を見、また風のそよぎを聞くであろう」なんて名文を読まされたら、「歓楽」とかいう小説を読まなければならないような気がするじゃん。

小石川から下谷への5歳の遠足は蠱惑的。

初めての上海で、強い刺戟を受けたのは強烈な色彩だった。

いかなる女人愛好の場においても、つねに自ら高所に立って女を安易に扱っている。そして、どんな場合でも節度を心得ている。

荷風に於いては、中国文学というより、江戸漢文学の影響が大。