ボロ家の春秋 (講談社文芸文庫)

ボロ家の春秋 (講談社文芸文庫)

 

蜆→ 割れた省線電車の窓、カストリ焼酎、外套は何の表徴か? 星菫派、喫茶店のココア、日暮れみたいな船橋の街、会社の解散式、義侠心溢れる老人の死 蜆の詰まったリュック、泣き出す蜆。

 黄色い日日→配給のスケトウ鱈を、界隈の人々と、家に立てこもって喰らう。精神鑑定と前頭葉の手術。ラジオから流れる東京裁判の実況放送>デス・バイ・ハンギング! シロホンに合わせ草津節を踊らされる犬。小菅刑務所。

Sの背中→一番安い肴がカレイの煮つけ。背中の痣に毛が三本。それをめぐる愛憎劇。駒を買いながらする将棋。

ボロ家の春秋→小さな家をめぐっての騙し合い。騙された同士の共同生活。転売やら貸し部屋の奄美黄島への高跳びやら差し押さえを勧める小役人やらも、梅崎のユーモアは似非英国紳士みたいな高所からの韜晦ではなく、自虐的な処がよろしい。サントニン入りチョコレートとか台湾料理のフルコースとただのラーメンの落差とか、笑うしかない。

凡人凡語→老先生が推奨したのは松沢病院か。うーん、さらに転院したQ病院とやらの、かつての精神病院の暗部が描かれる。電気ショック(;´Д`)