夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

 

 「ぜんだいこの街の人は不自然だ」「『死ねばいい』と誰かに思われたということ」「思われたのに生き延びているということ」「そしていちばん怖いのはあれ以来本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに自分で時々気づいてしまうことだ」

「救護所には別の生物のようにまん丸く膨れた集団が黙って座っていた」「そのひとりが母だった」「死体を平気でまたいで歩くようになっていた」「時々踏んづけて灼けた皮膚がむけて滑った」「わたしは腐ってないおばさんを冷静に選んで下駄を盗んで履く人間になっていた」

「のどをまた生ぬるいかたまりが通ってくる」「もうただの血ではなくて内臓の破片だと思う」「うでは便器をもつのが精一杯」「十年経ったけど,原爆を落とした人はわたしを見て『やった! またひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?」

 

そしてまた,川面にあふれる死体が描かれた新大橋の風景。原爆スラムと称された集落の変貌。七波と凪生と東子のその後と,広島の平野家の墓碑銘…。

 

世評名高い10年前の作品をようやく読めた。読んでやはり胸が熱くなった。図書館で非閲覧になる日も近いのか?!