• 「みつどもえ」最終回

うーん,困った。妙に評判がイイので見てみたが,やはり何処がイイのかサッパリわからなかった。


群衆 - 機械のなかの難民 (中公文庫)

群衆 - 機械のなかの難民 (中公文庫)


夏目漱石に始まり,石川啄木有島武郎大杉栄夢野久作萩原恭次郎金子光晴…と続く人々は,いずれもかつて愛読した作家たちであり,懐かしさすら感じたのだが,戦後の描写になって急速に薄っぺらい結論に至ってしまうのがツマラナイ。丹下健三辺りからは読む気力を喪った。そんな中で,幾つか引用。

・漱石は『坊っちゃん』によって近代人を徹底して揶揄する。近代人とは群れを頼んで自分は責任をとらぬ者たちである。
・鉄道の国有化を果し,鉄道はパノプティコン式監獄の十字型の廊下そのままに全国飲みならず,大陸へと放射し,それは東京駅によって束ねられ,皇居に真っ直ぐ向かい合わされた。…巨大な駅を通過し,啓蒙君主たる天皇の住む黒い森を望み,赤子たることを自覚しなければならなかった。
・大鈴中佐は血液の検査がしたかったがこれは拒絶された。即ち大小便や痰のような排泄物は勝手に検査してもよいが,血の一滴たりとも採らせぬというのであった。…東条首相は新年で血液検査をこばんだのではない。単純に注射が怖かったのである。