• 番犬たち


30年前に買った本を今頃読了。フランスにおけるベルグソンの亡霊というのは未だにあるみたいだが,当時は特に酷かったのだろうな(~_~;) 
番犬たちが跋扈する21世紀の現在にも通底する部分を抜書き↓

ブルジョアとは孤独な人間である。彼の世界は,機械類と,経済的・法律的・道徳的な諸関係からなる抽象の世界である。
・自分たち自身の哲学の決定事項を実現する有効な知的道具を必要としている人間たちの大群がいる。彼らは,あの思想の建築物に赴こうとするのだが,それはブルジョワジーによって奪われている。彼らに差し出されているのは,今日存在する例のまぜものの哲学だけである。
・調和の愛好者と,調和がないところに調和を見ない者がいるのだ。前者は究極において人間たちの失権を食いものにし,後者は,この世の中で現実に充足することを要求し,前者が差し出す安易な期待,架空の約束の土地,慰めの言葉をはねつける。前者は膀胱を提灯と言いくるめ,後者は執拗に膀胱とは尿をためる嚢であると主張する。…アリストテレスは搾取者であった。エピクロスは搾取者の列にはいなかった。
・人間たちに対する現実の抑圧は,ネメシスのなすような抽象的なものではない。根源的な堕落の結果でもなければ,情念によって惹き起こされた個人の内面的奴隷状態の結果でもない。したがって自由は,もう,宿命に対する詭計ではなくなる。贖罪ではなくなる。あるいはまた,これまで常にブルジョワ思想の目印となってきた,あの,情念に対する「理性」の勝利というやつでもなくなる。そうではなく,抑圧とは,歴史によって固め合わされた過去そのものであり,死んだ記憶による抑圧である。してみると,哲学とは,墓掘人足の仕事に等しい。