今読んでも、極めて聡明かつ刺戟的な評論集。
伊藤野枝に断固として公娼廃止を説く。
貞操とは男子の女子に対する独占の希望から発した、女子の個性萎靡、本能抑圧の要求である、貞操は売淫の原動であると喝破する。
女子の職業教育とは、資本主義的社会によりよく女子を適順せしむる必要から生まれたものである。
救世軍の説法に対する虚偽に対する憤りが猛然と炎え立って、席を立とうとした筆者に共感。
職業としての、不経済な非文明な妻君業を廃絶したいと思う。在来承認させられてきた唯一の婦人職業の本体は、育児業ではなくて細君業ないし結婚業であった。
良妻賢母は危険思想である、と言い切る。
女子とともに、朝鮮人にも同等の権利を与えよ、というのは先進的な論。1世紀経っても、まだ確立には程遠いぜ。
キツイ労働や悲惨な生活に堪え難いときは、団結して資本家の搾取に対抗する代わりに、性を売る女の群れに投ずることを意としない封建的隷属の思想的習慣!
そろばん外交=腰抜け外交が、サーベル外交=強硬外交とは、共通の階級的利害に奉仕する同一手段の表と裏の相違にすぎない、うんうん、リツケンやらニッキョウやらはほぼこの違いをあげつらうアホ―でしかないわ。
正義のため、共同利害のためには、子に傾け尽くすと同じ情熱をもって、その子を戦神の祭壇に捧げて悔いない。
投票は自由意志により、自己の責任において行われなければならぬ。
1952年の英国、ユーゴ、インド、タイを巡る旅も興味深い。
編者の鈴木裕子氏は90年頃だろうか、一度講演を聴いたことがあるが、菊栄の正当なる後継者だと思われまする。