女妖啼笑―はるかな女たち (講談社文芸文庫)

筆者はかなりのおぼっちゃまであった模様。明治の女の子たちとの幼いながらもエロチックな体験が羨ましい。愛媚僻なる造語! 祖父はコック通勤。そのコックが賭博者。下女におんぶで厠に運ばれた甘美な記憶。刺青のうつし絵を内腿の奥深く。女琵琶師の奔放さと同じ身分の娘との欲望。

番町の屋敷から浅草へ、そして久留米。性的な覚え書き。和綴じの錦絵の男女の姿態 

山の手でも邸の子と町っ子では言葉が違っていた 浅く登戸屋敷の殿には常磐津の師匠宅。近くには肥前松浦藩やら対馬の宗氏の館。

宮廷音楽関係の東儀氏、電小僧の音楽家崩れ 新撰組生き残りの老人、校長は三島由紀夫の伯父。

秀才と好色は別物であって、男にとって女が、女にとって男が消耗品である。

鴎外は春秋差伝を反復して読めといった。

教師にはとりのこされてゆく喜びがある。

帝劇専属の歌舞伎俳優がオペラにも出演した。

日本には廃墟がない。廃墟のうつくしさから誘いおこされる深い激情の熱っぽさを知らない。

島原に花魁買いにゆくのに西鶴からはいる

震災後のバラックの向日葵、橘少年への同情、五反田などの田圃の中にできた花街。

「故都芳草」は日本の経済侵略や、活劇浪漫が描かれていて異色。

パイカル茴香を漬けるとジンのような味になる。

女は侵略者になりうるか?

「山河存」を終戦78年だかの8月に読めて良かった。