ヴァイマル憲法とヒトラー――戦後民主主義からファシズムへ (岩波現代全書)
- 作者: 池田浩士
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ナチ党が躍進したのは比例代表制のもとであり,投票率は70~80%に達していた。そして,失業率の高い地域での得票は伸びず,自営業者での得票が大きかった。
ヒトラーは自分を首班とする政府を「国民的政府」と呼び,やがて「国民決起の政府」と言い換えた。ナチズムの訳語について,同盟関係にあった日本では「国民社会主義」と訳すのが主流だった。やはりコクミンって怖ろしい。
ワイマール憲法の最大の問題は大統領緊急命令条項で人権が制限できること。検閲は映画には認められ,猥褻低俗図書が弾圧される。一方で,言語的少数者が母語の使用を保証され,称号や勲章を否定している点は先進的である。
ドイツ軍を背後から匕首で刺したのはユダヤ人であり共産主義者であるというヒトラーの「発見」はその後も説得力を増すことになる。財界の親玉もユダヤ人だったりするのにね。
自発的=ヴォランティアによる労働調達(→歓喜力行団!)は,失業者に仕事を与えたのみならず,ゼネコン財閥の資本蓄積を増大させ,正規雇用労働者を雇うことが可能になった。←この辺もナチスノスタルジーの一因か?
ナチスは,ユダヤ人に対するより早く,聖書研究者(ものみの塔,エホバの証人)への弾圧を開始した。彼らの,武器を持たない・国家儀礼を拒否するという信条(自己決定権への強烈な拘り)ゆえに…。
治安の良さ,積極的な社会参加,そして国家のリズムに唯々諾々と従うことって,実は現在のドイツ人とあまり変わっていない。ドイツ国民こそがヴァイマール憲法を蹂躙したという指摘を私は支持する。
高名なヴァイツゼッカーの父はナチ高官として,ユダヤ人をアウシュヴィッツに送り,ユダヤ人との混血児に断種手術を強要した戦犯である。僅か5年で恩赦釈放されたことで,戦後の西ドイツ外務省が元ナチ官僚の牙城となった。なーんだ,ニホンと大して変わんんぇじゃん。
イワナミから池田氏が本を出す日が来ようとゎ(*_*; ルカーチにも触れられて思い残すこともあるまい(^_^;)
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