ユートピア (岩波文庫)

ユートピア (岩波文庫)


30年以上前に買った本,ようやく読了。元々はラテン語で書かれたことを初めて知った。
「大抵の君主は平和を維持することよりも,戦争の問題や武勇のことに興味があるのです。ですから,現在の領土をそのまま平和にうまく治めてゆくということよりも,正当の権利があろうはなかろうが,なんとかして領土を拡張しようと一生懸命になっております」「常に歴戦の精兵,腕ききの人殺しを備えておくためには,次々に戦争をおい求めてゆくということになります」と戦争を告発し,「人を殺すのも人から金を盗るのも,みな同じことだという風に,あらゆる罪を同一視する,罪と名がつけばあれもこれも同じような凶悪の烙印をおす,あまりにストア風な法律は,全くもって言語道断と称するほかはありません」とリベラルを主張するのだが,「必要とあれば巨額の報酬の約束の下に,どんな危険な所だろうがお構いなしにどしどし傭兵を送るが,殆どその大部分が生還しないので,結局その報酬もそれだけ浮く」といったリアリズムや,「敵兵と味方の真只中に割り込んできたのが司祭たちで合った。彼らは虐殺の悲惨事を防ぎ,両方の軍を引き分けた」と宗教家への要求も忘れない。やはり,ココには「解説」にあるようなトマス・モア自身の数奇な運命の投影があるのだろう。貨幣制度が最後の宿題ってのも,ユーロの現在に繋がるかな?
面白かったのは,ユートピア国では,金や銀はなんと便器に使われている!という部分。そして,配偶者を選ぶさいに,男女はともに裸体となり,互いの欠陥を調べ合う!という部分。