堀田善衞上海日記 滬上天下一九四五

スターリンは史大林と書くのか。

Nは随分とエキセントリックな妻だな。

民主主義や社会主義は大体新官僚主義。

三民主義は救国主義。

長い禁欲生活のせゐばかりでもあるまいし、又はつきりした仕事のないかういふ異様な生活のせゐでもあるまいが、何かむせるほどに自分はNを愛し出してゐるように思ふのである。

酒や映画や雑談や買春?やらなんやらに明け暮れていたのか。傍目には恵まれているように見える。

天皇やら政治家やらに同情している部分があり、意外な感じを受ける。敗戦とか帰国ラッシュとかで孤立していたのか。性的にも随分と赤裸々ではある。

腹をこわす前は、少し性慾で苦しんだが、腹がなおった頃日、どうも性慾がちつともない。

日本酒は乱暴をしたくなる。ビールか歌を呼ぶ。老酒は心がわりにまるくなる。

この人に詩の才能は全く無いね。

南京で泰淳と草野心平と飲み明かしたんだ。