まだユーゴスラヴィアがあった頃。イタリアらしくないトリエステを訪れる。サバなるヒトが誰だか知らんけど。って、大評判になった表題作は大して面白いとも思わなかったのだが、筆者の本領は「電車道」や「ヒヤシンスの記憶」で発揮され、過去と現在、イタリアと東京を自在に往来し始める。そして、「雨の中を走る男たち」に至っては秀作映画を見ている如し。

「キッチンが…」以降はネオリアリスモを地でいく人間模様。そして私小説になりがちなところを、客観化する才能はやはり舌を巻く。

そーいや、関町のエマウスの家を何年か前に探索したが、もう影も形も既になかった。