どの短編をとっても、作者の小説家としての手管の深まりを示す。何だろう、コレは? 

意匠を凝らし、ヴァラエティに富みながら、はずれのない凄さ。1960年前後は傑作が多かったのだな。2021年の現在でも、1つとして退屈なものがないのは奇跡(「人形と笛」だけは保留しとくが)。この50年なんて(「女流」とかいう限定形容詞も不要だが、「男流」なるものが遥かにウンコなのは云うまでもない)ゴミでしかなかったんじゃなかろか? 完全に韓国の小説に追い越されたのは当然だわさ。

戦前からの左翼体験をもつ女たちの日常がそこはかとなく面白く可愛い(ぶっ飛ばされそうだが)。フツーの紀行文っぽい「海の旅情」や「色のない画」も実は深い。身体障碍を抱えた「水」やⅮⅤを正面から扱った「泥人形」もスゴイ。