島抜け (新潮文庫)

どちらかと云えば筆者は佐幕派と勝手に見なしていたが、徳川に対しては豊臣派なのか? ってか、むしろ判官贔屓なのか?

薩摩藩が意外と開放的。瀬戸内から山川港まで、そして島抜けしてから清国の島に漂着するまでの描写はさすがに吉村氏の面目躍如。長州の三田尻で糊口をしのぐが、結局…。

ってか、もはやアドベンチャーゲーム

「欠けた椀」は小品ながら、飢饉のもたらす狂気、偽物の法度と仏道、倫理をさめざめと描く。

「梅の刺青」は人体解剖事始めのお話。五臓六腑説が権威であった時代。宇都宮鉱之進が京都に上って病全快とはこれ如何に? 梅毒院の醜状。雲井龍雄にも冷淡なり。