フランス史10講 (岩波新書)

フランス史10講 (岩波新書)

 

 ・従士になるときには「臣従礼(オマージュ)という儀式がある。従士になろうとするものが武器をもたずにひざまずいて,両手をあわせて相手の両手のなかに置く。これは服従を意味する。だがすぐに,この行為で主人となった相手におこされ,抱擁をうける。これによって二人は対等となり,臣従が従属ではなく友情に基づくことになる。この儀礼はゲルマン国家に固有のものであり,従士制の性格を示す重要な象徴行為だった。ついで,おそらくキリスト教の影響によるものだろうが,従士になった者は「誠実誓約」をおこなう。日本の君臣関係と違って,一人の戦士が多くの主人と従士関係を結ぶことがありえたのも,この双務契約的な権利・義務関係だからである。

・王から認可され,権利を与えられる団体を…「社団」と呼ぶ。自生的な社会的関係と社団の違いは,自生的関係は流動的で,…社団は,社会を固定させるための編成原理なのである。

・アンシアン・レジームは二つの秩序原理に立脚している。一つは家門や血統を原理とする伝統的な身分秩序であり,…もう一つは才能を原理とする秩序であり,才能は国家のためにこそ役立てられるべきものとされるから,この価値体系の根幹は国家への「功績」である。

・18世紀中葉まで「意見」(オピニオン)という用語は,フランスでは非理性的で浮動的な雑音を意味した。だが世紀中葉になると,理性に基づく公正な判断という意味をもち…政治的主張に正当性を付与する根拠となった。しかし…「公共意見」や「公論」とは…もはや絶対主義的な政治秩序の用語や伝統的制度の回路では主張の正統性が保証できなくなったため,それにかわるものとして「発明」された概念であり…。

ロベスピエールにとっては,民衆は依然として啓蒙されるべき存在であり,…一方で可能な限り貧困な民衆に所有を分配して「市民」化するとともに,他方では過大な所有を制限し,…習俗の全面的刷新によって「新しい人間」を創り出す必要があった。…「テルール」とは「徳と恐怖」を原理にもつ戦時非常体制であり,「徳」とは公共の善への献身,「恐怖」とはそれに反する者への懲罰をさす。

・私は「ブルジョワ」概念を経済的ではなく,社会・政治的概念として,すなわち民衆層から上昇する新興中間層としてとらえてきた。この社会層は商人・産業家・官僚・法曹・言論人など何らかの意味で国家の機構的・地域的な集権化の波に乗って上昇してきたマージナル・エリートであり…この社会層が変革主体の根幹となって,彼らをエリートの「マージナル」たらしめている身分・社団・産業規制などの解消を変革の目的とした…。

・急進主義は,名望家体制の議会主義を継承する点でリベラルであり,個人の人権尊重の点でデモクラティックであるが,個人主義的傾向が強く,社会主義の「階級」概念を退けた。そのため党による議員活動への拘束力が弱く,…組織政党としての求心力に欠ける。

・現在の共和主義は,国家主権を溶解させない限りでの「グローバル化」の受け入れ,人権の擁護,社会関係の絆としての連帯,抑制された市場原理というテーマについての,ゆるいコンセンサス領域をつくる折衷的な政治文化なのである。

…なんて辺りをメモ。ま,あんましタノシイ本ではなかった。☆★