追われゆく坑夫たち (岩波新書 青版 391)

追われゆく坑夫たち (岩波新書 青版 391)


絶対的貧困は,ついひと世代前まで日常の風景だったのだけれど,ここに活写されているのは,もはや言葉を失うほどの絶望的貧困である。大炭鉱の労働者からも,農民からも,フツーの庶民からも,遥かに深く遠い闇の底を蠢いて,かろうじて現世のあぶくを呼吸しようとする坑夫たちの姿は,実はもう少し先のこの国の現実なのではないのか? 「Aというヤマはつねに決定的にBというヤマよりもひどく,Bというヤマはつねに決定的にAというヤマよりもひどい。十の炭鉱をたずねれば十の口から,百の炭鉱をたずねれば百の口から吐きだされる,コールタールのような痰にまみれたひとつの告白が,きっときかれるはずだ。『こげなヤマは生まれてはじめてたい!』……すべてのヤマがそれぞれに『万邦無比』の絶対君主国家なのである」という辺りの閉塞感。