• 「戦争と平和」第三部

この人海戦術と死屍累々,緊迫感があるんだかないんだかわからない延々と続く戦闘シーン…まあなかなかにトンデモ映画だわ。「人を殺して戦争のルールも人道もあるか。戦争は社交じゃない,最も醜悪な行為だ。恐ろしい必然に真剣に向き合うべきだ。偽善は無用,戦争はゲームじゃない。殺し合いをするために集まるんだ。殺せば殺すほど手柄は大きい。神はどう御覧になってることか」というアンドレイの口上が印象的。

  • 「戦争と平和」第四部

もはや動く絵画のような映像だわ。そして空撮…。ナポレオンの卑小さと,フランス兵をいたぶらないロシア精神の美徳賞賛。「処刑する彼らだってつらそうだ。だったら誰の意思なんだ。誰でもない。流れだ。状況の集積なんだ」と残虐な処刑シーンを見ながらピエールはつぶやく。カラターエフが射殺されるシーンでも「これが人生だ。この水滴がカラターエフ。命はこうして現れては消える。実に単純明快だ,命とはすべてなのだ」とピエールは思うのだ。「俺を拘束し捕虜にした気でいる。その俺って誰だ。俺を,だと? この俺を。俺の不死の魂を! すべては俺のものだ。すべてが俺の中にある。このすべてが俺なんだ」と畳み掛け,不敵に笑い出すシーンはロシア文学の真骨頂であろう。