• 三四郎

三四郎 (岩波文庫)

三四郎 (岩波文庫)


冒頭の九州から東京へ向かう列車の描写(弁当がらを窓から投げ捨てていたのね)とか,本郷界隈の漫ろ歩きとか,非常に面白く丹念に読んだが,中盤からは美禰子との恋未満のやり取りが中心となり読書スピードが加速した。広田先生みたいな強烈な個性もなく,与次郎みたいな世渡りの巧そうな部分もなく,三四郎は透明な人格をのらりくらりしてる。一方の美禰子は勁いんだか脆いんだか図太いんだか儚いんだかよくわからんキャラである。低徊趣味だの露悪家だのは,少なくとも則天去私なんかよりはずっと共感できました。