太陽の子 (角川文庫)

太陽の子 (角川文庫)

 

 初版は1978年だから,ちょうど私が初めて高円寺のきよ香へ行った頃だ。そして「じゃりン子チエ」(どこか「ふうちゃん」とイメージがだぶる)が発表された頃とも重なる。過半までは淡々とした流れだったのが,終盤怒涛の展開(キヨシ少年と母親との確執と和解,ヤクザとの立ち回りと警察官とのやり取り,おとうさんの徘徊と瞬時の希望,そして突然死…)を見せる。現在とは明らかに異なるのは,こんなに良心的(ほんとうの友情とは,まず…苦しい歴史を知ることだ。知ったなら,考えることだ。そして,自分の生き方にそれを生かすことだ)な小学校教員はすっかりパージされたし,精神科の処方は随分と分析的になった(かといって一概に進歩したともいえない)という点か? ろくさんの云う「ひとを愛するということは,知らない人生を知るということでもある」は名言。☆☆☆★