あいどる

あいどる

 

 20年近くも前の小説だが,既に現実化してしまっているような既視感がある。…といっても,サイバーパンクなるシロモノに一切興味の絶無な人間には話の内容などどーでもイイ…というか,大部分苦痛なのであるが。

ダイアトニック・エラボレーション・オブ・スタティック・ハーモニー。メジャー・セブンス・コードの音階を使った下降ベースラインともいう。バッハの《G線上のアリア》一七三〇年。プロコル・ハルムの《青い影》一九六七年。

むかしのヴェネツィアでは,カジノというタンゴの意味が,ギャンブルしたりショーを見物したりする大型モールのような場所ではなく,…ラブ・ホテルに似たものだったらしい。だれにも自分の住居があったが,カジノは町のあっちこっちに隠された秘密の小さい貸し部屋で,ほかのだれかと密会するときに人びとはそこを使った。