父を焼く――上野英信と筑豊

父を焼く――上野英信と筑豊

 

 作者は女性と思ってたら男性で同世代だった(-_-;) 

上野英信の書き留めた「させる」の主体はあくまでも女坑夫の側なのだ。坑内の暗闇の中,女坑夫が自らの意志で,監督役である小頭に襲いかかってその肉体を奪うのである。…英信流の「させる」は,ちょっと文法的にいってみれば使役の「させ・しむる」で,女坑夫のほうが,自分の性を楽しむために小頭の肉体を使ったということである…というゴットン節(唄は知らないけど)の解釈は面白い。

幽霊が出る,霊が憑いていると宣告されると,やれ除霊だ鎮魂だと慌てふためくけれども,やたらと除菌をしてもさしていいことはないように,他の命を思う心まで取り除いてしまっているような気がしてならない…という旧炭田=幽霊の産地に暮らす作者の「聖なるものや清浄への憧れなど,かけらも持ち合わせていない」態度も興味ふかい。