• 「ガラかめ#39」2回を費やした劇中劇がトホホだったのですが,現実の恋愛模様の方がドラマチックになってきました。繰り返される狼少女のエチュードは,獣欲の象徴でしょうか?
  • 太陽黒点」(山田風太郎廣済堂文庫)

スタンダールドストエフスキーかってな青年の苦悩を描くのかと思いきや,その恋人の一途さ故の転落を活写し,さらに戦中派の中年男の策謀へと筆を転ずるという視点の移ろいは流石というべき。最近話題の西岸良平と同時代の貧しさを描いているのに,このどす黒さは不敵である。ミステリーとしては強引すぎで,ビスマルク云々もどうも眉唾くさいんだが。最後の「ーはない」「ーしはしない」と畳みかけながら,「だがしかしー」と口ごもる特攻崩れのまとわりつくような述懐は凄みがある。共感はしないけど。