火星の魔術師 (探偵クラブ)

火星の魔術師 (探偵クラブ)

 

 まさに竜頭蛇尾な本。前半は面白いが,後半は糞。☆

・夢鬼…醜い黒吉が,美しくも残忍な葉子に恋の手ほどきを受ける。曲馬団の空中ブランコ乗りとなって,死と隣り合わせの不思議な快感を得て,予言の夢を見るようにもなる。やがて必然のように墜落し,片脚と片目を失う。しかし,宙を舞う快楽を忘れられず,航空研究所のパラシューターとなる(パラシューター,それは大空のコスモポリタンである)。偶然巡り合った葉子を絞め殺し,全裸の新婚旅行=心中のダイヴが始まる。変態小説として,とても素晴らしいです。

・魔像…「健康な娘の死体から,何時か赤黒い腐液が,じくじくと滲みだし,表皮がぺろっと剥げると,そこには盛上がった蛆虫が……。藍紫色に腐った臓器や肉塊が,骨からずるりと滑って,硝子箱の底にどろどろと澱んだ腐汁になってしまう……。むき出された骨の上を,列をなして舐め廻る蛆虫の蠢めき,又,それに真赤な唇をぺろぺろ舐めながら,一生懸命ピントを合せている水木の姿……」なんて描写がよろしい。

・白金神経の少女…何だよ,鷲尾老狂人は図らずも恋のキューピッドだったのかよ(*_*; 恋愛電気学だのプラチナ線の義手だの暦のトリックだのは触媒か。木美子の描写がもう少し欲しかったわ。

・睡魔…茅ヶ崎が転地療養のマッカであった時代もあったのだ>島尾敏雄とかも。しかし,30匹もの犬屋なる商売があったとはね。

・地図にない島…えーーっと,ただの整形話ですよね。日章島第一号とか,ネトウヨ並の与太話。

・火星の魔術師…コレを表題作にしちゃアカンだろー>国書刊行会編集部よ! どーしよーもなく,つまらん話です。まー現在のDNA解析にうつつを抜かす生物学者も同類だわ。

・磁気学研究所のボルネオ進出→南進論そのままに「東亜文化を西漸せしめねばならん」のだそうな。で,「原子爆撃による元素の変換」なんだと。最後はベタな一字違いオチって…酷い。