アメリカでは金融の自由化がバブルをつくり出し,バブルの中で企業や家計は返済できない借金を拡大し,住宅購入などの支出を拡大した。アメリカ経済を支えていたのは,バブルと借金の拡大という最悪の形での需要刺激策であった。
ケインズ以降の世界に住んでいる我々は,政府が完全にではないにしても,経済をある程度はコントロールできることを知っている。福祉国家はその政府の力を貧困の解決のために使っていた。他方,新自由主義レジームは,同じ力を金持ちと企業の利益のために使っている。
ハイ・ロードとは技術革新によって,高い品質の製品を低価格で生産することによって競争するというものである。他方,ロー・ロードは低賃金により競争に打ち勝つというものである。戦後資本主義が追求したのは,ハイ・ロードであり,現在の新自由主義レジームが追求しているのは,ロー・ロードである。
企業は生産の上昇に応じた賃金を支払う代わりに,労働者は企業に忠誠を誓うということが,戦後資本主義の暗黙のルールであった。それが今では,経営者は労働者をリストラし,賃金を抑えることによって利潤を拡大し,株価を上昇させ,経営者は対価として法外な報酬を得るということにルールが変わった。
労働によって新たな財が生産されれば,社会は豊かになるが,株価や住宅価格がいくら上昇しても,新たな富が生み出されたわけではない…売り手の利益は買い手の損失によって相殺される。キャピタル・ゲインが関係するのは,富の創出ではなく,富の分配である。
アメリカと違って,日本では今でも製造業は基幹産業であり,多額の貿易黒字を稼いできた。しかし,この多額の貿易黒字の蓄積は円高を引き起こし,製造業の国際競争力を低めることとなった。これは逆説的に聞こえるが,市場メカニズムが健全に機能した結果である。
サブプライム金融危機の中でウォール街の金融機関が壊滅したのは,反社会的な投機の失敗が原因である。したがって,公的資金を注入された金融機関が,金融システムを崩壊させるような投機を続けるのを許すべきではない。しかし,実際にはこうした経営改革は行われなかった。それどころか,公的資金の少なからぬ部分は,経営者の莫大な報酬支払いのために使われた。
東アジア各国政府による為替介入は,持続不可能と言われ続けてきたアメリカの経常収支赤字を賄い,持続させてきたのである。しかも,東アジア各国政府がドルを購入する時に,実際に購入しているのは,安善で利子のつく,アメリカ国債である。すなわち,中国や日本を始めとする東アジア各国政府は,持続不可能と言われ続けたアメリカの財政赤字も支えてきたのである。

引用した部分は至極真っ当な内容である。どうしてこのような解りやすい理論が主流になり得ないのか?? この世界は狂っているよ。