継続する植民地主義―ジェンダー/民族/人種/階級

継続する植民地主義―ジェンダー/民族/人種/階級

8年前の本。当時でもバックラッシュの波は高かったわけだが,今やツナミとなっちまってるのだ。

・「戦後」という時代と社会そのものが植民地主義と戦争の継続を踏み台にして成立していて,この現在の事実に対してほかならぬその当事者として責任が問われるということだったからである。(中野敏雄)

・(SCAPは)絶対的な権力が非常に便利であることに気づいた。裁判といった法的手続きや手間をかけず,また外部の監視にさらされることもなく迅速に行動できるのである。(TMスズキ)

・(羅惠錫)をフェミニストの面だけで評価できるのか,民族や階級という問題を見てこなかったという意味でも評価しなければいけないという問題があるわけですが,韓国のフェミニストの間でもきちんと論じられてはいないんです。(金富子)

女性国際戦犯法廷フェミニズム自体を複数化し,内から差別化する契機をもたらしたともいえるのではないでしょうか。それは男女参画型女性運動やネオリベラリズムフェミニズムの資源にされることのない,居心地の悪さも含めて語ることが可能なフェミニズムの足場,民族,階級,宗教,セクシュアリティ,すべての問題が連接し合えるような場を構想するということでもあります。(米山リサ)

・(ベアティ・シロタ・ゴードンは)占領によって解放された日本の女性は,イラクやアフガニスタンで米国の信用を高めることができる,米国は日本を軍事占領しても植民地にはしなかったと,日本女性は同じ「有色の民」としてイラクやアフガニスタンの人々に示すことができるから…(と述べた)(米山リサ)

指紋押捺義務がなくなった外国人登録制度は個人登録から外国人戸籍,すなわち家族登録制に替わり,日本国籍を取得しても戸籍=イエ制度=天皇制に取り込まれる。むしろ在日朝鮮人コミュニティーが内在させる性差別への反発が強いほどに,日本の体制的価値に取り込まれる逆説を指摘できる。(宋連玉)

・(李珍宇という)怪物に直面した日本人マジョリティの心理は,自らの国家がおこなった植民地支配の反省,戦後処理の過程で在日朝鮮人に加えられた理不尽な権利剥奪への批判に向かうのではなく,厄介払いの方向へと向かったのだろう。李珍宇は「あの世」へ,多くの在日朝鮮人は国交のない北朝鮮へと,体よく追放されたのだ。しかも,「正義」や「人道」の名において。(徐京植