怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

 

世間の美意識に寄り添うのではなく、パノフスキーにまで異議を唱える、意外と硬派な内容だった。

ティントレットの有翼の天使たちをゴキブリに喩えるのは秀逸。

ブロンツィーノのヴィーナスとキューピッドへ母子相姦図の変態性。

ボッティチェリのナスタジオは、たんにけったいなおぞましい絵ではなく、愛の深淵を語るものに思えてくる。

父が子を喰い、子が父を殺す。サトゥルヌスはギリシャ悲劇であるとともに、乱世の因果律なのか?

西洋では、元々、老いは蔑視の対象で、古代・中世・ルネサンスと進むにつれて、さらに罵倒された!