世間の美意識に寄り添うのではなく、パノフスキーにまで異議を唱える、意外と硬派な内容だった。
ティントレットの有翼の天使たちをゴキブリに喩えるのは秀逸。
ブロンツィーノのヴィーナスとキューピッドへ母子相姦図の変態性。
ボッティチェリのナスタジオは、たんにけったいなおぞましい絵ではなく、愛の深淵を語るものに思えてくる。
父が子を喰い、子が父を殺す。サトゥルヌスはギリシャ悲劇であるとともに、乱世の因果律なのか?
西洋では、元々、老いは蔑視の対象で、古代・中世・ルネサンスと進むにつれて、さらに罵倒された!