世評名高き秀作であるらしいのだが,大いに違和感を感じた。Ⅰは70年代の米国映画みたいな話(方向性は違うが,反戦活動家の30代女性と徴兵予定の若者の愛欲みたいな…)だし,エロスが横溢してて読むのが楽しい。36歳の女市電車掌に朗読して聞かせる15歳男ってのが新鮮だ。Ⅱ・Ⅲで,いかにもドイツ映画って感じのナチス協力者の犯罪追及噺へ主題が移り,ハンナが文盲であったらしきことが暗示される。「悪法は法ではない」と信じる私にとっては,何だ,ドイツの裁判も結局裁判長の心証次第なのか,改悛の情ってのが全てなのかよ…とゲンナリするわけだ。「文盲」って語は私の辞書登録されてないことに今気付いたのだが,話す聞くはできても読み書きはできないということのハズ。考えてみれば,一般人は,裁判自体に文盲であるわけだ。或いは,今私がイスラエルに抑留されてパレスチナ人を殺す手伝いをさせられているとしたら,ヘブライ語は全くの文盲以上だろうなぁ…なんて類推しながら,読了したのだった。