谷崎潤一郎随筆集 (岩波文庫 緑 55-7)

谷崎は漱石の門がお気に入り。

白い歯のホリーウッドのスタアの写真を見ると、何となく西洋便所のタイル張りの床を想い出す。←ホントホント💘

西洋には「聖なる淫婦」「みだらなる貞婦」というタイプの女があり得るけれども、日本ではあり得ない。日本の女はみだらになると同時に処女の健康さと端麗さを失い、血色も姿態も衰えて、下品な淫婦になってしまう←これは現在ではどーやろか?

日本人男子は性生活において甚だ淡白な、あくどい淫楽に堪えられない人種である。

鎌倉や鵠沼や小田原など、飲み水のまずい蚊の多い所に避暑に行くにのか気が知れない。

古代の夜は神秘な暗黒の帳を以て、垂れこめている女の姿をなおその上にも包んだのである。

女子を儒教的に、武士道的に教育し、女大学流の貞女を作るというのは 最も色気のある婦人を作ることだった。

荷風は次第に紅葉山人風な写実主義に転じた。もともと世を拗ねているのだから、世間の毀誉褒貶や評論家のいうことなどを眼中に置いていない、とは随分な言い方。化政期の戯作者の世界にとどまって、それ以前の上方文学の領域に着目しないのか、というのは説得的。

大阪の女学生は、長屋のかみさんがアッパッパを着るのと同じく、便利と実用の一点張り。

大阪には、婦人で太棹の芸者のような地声の人が珍しくない。

東京の老人は潔癖で億劫がりで人見知りが強く、世渡りが拙く、呑気に余生を楽しむ。

日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠。

衣裳というものは闇の一部分、闇と顔とのつながりに過ぎなかった。

大阪の郷土芸術である義太夫は痴呆の本家本元である。

人形町や蛎殻町の描写は良い。玉ひでや快生軒も出てくる。文壇事情はよく分からん。