(041)女 (百年文庫)

もはやこれは散文詩、といった趣の「洲崎パラダイス」。駄目男に流される女を実に無駄なく描写している。そして、「男というものは、たとえ悪を働いても女を支配するものでなければならない」という女なのである。戦後の弁天町1丁目は貧弱な住宅地で、木場の若い衆や工員くずれが棲み、2丁目は特飲街だがパッとしない。淫売婦の成れの果ては、三味線一つ弾けはしない。ポンポン蒸気に乗れば千住大橋からお台場まで行ける。堕ちた女には興味を失うに決まっている。そんな瀬戸際の危うさが魅力なのだった。

西條八十って歌謡曲の作詞家というイメージしかなかったのだが、タイヘンな才人だったのだな。小説も少しピカレスク風。

平林たい子は、戸籍とか保険とか、ふーみゅ。