快楽としての動物保護 『シートン動物記』から『ザ・コーヴ』へ (講談社選書メチエ)

シートンは科学的記述と距離をとり、物語という形式を意図的に選びとった。

シートンが発見したように、動物が経験や学習を通じて行動を形成するなら、本能という自律的な自然という神話は崩壊してしまう。

シートンは、人間にはない感性を物語を通じて疑似体験的に提供するなかで、動物の視点から世界を捉えようとした。

スポーツマンハンターを自称する白人エリートの多くは、銃をカメラに持ち替え、北米の原野へ分けいった。

ナチュラルジオグラフィック誌は、拡張と征服という帝国主義の欲求を満たすものとして機能した。

星野道夫は、狩猟民の世界に欧米のエコの価値観を安易に当てはめることの無意味さを狩猟民たちとの直接の関わりを通して直感していた。

歯クジラのうち、小型のものをイルカと呼ぶ。しかし、怪物としてのクジラがスーパーホエール化したのに対し、イルカは知的で可愛いドルフィンカルトが席巻した。

動物を保護する行為は、既存の階級構造を強化し、安定化させる思想的装置としても機能していた。

スポーツ・ハンティングのような娯楽や経験を目的とする狩猟の方が「食べる」ことを目的とする狩猟より上位であり高度である、というイデオロギー