日本文学史序説〈下〉 (ちくま学芸文庫)

日本文学史序説〈下〉 (ちくま学芸文庫)

 

 ・忠臣蔵が画期的であったのは、「忠義」の劇であったからでは決してなく、団結の、集団所属感の、つまりは日本社会の基本的構造の、集中的表現であったからである。

・町人には上級武士や百姓への関心はなく、日常雑事への関心に集中するとともに、遊里や空想的世界への逃避を求めた。

吉田松陰は詩人の資質を持つテロリストである。幕藩体制は参加の不可能を意味しており、その上位の権威を必要としたから「尊王」を唱えたのだ。

・あらゆる時代の日本人の中で、世界に最も影響を与えたのは鈴木大拙

 ・自然主義の作家たちはキリスト教の影響を受けたが、文壇にもてはやされると棄教した。

荷風も有島もアジアに対しては全く無関心であった。有島は個人主義を心中により生き抜き、荷風は素人女に手を出さず、野暮な密通を嫌悪した。

・「細雪」は谷崎の「失われた時を求めて」である。

・文学を歴史化したマルクス主義は、歴史を非文学化した。

丸善洋書部が芥川を作った。