居酒屋の世界史 (講談社現代新書)

居酒屋の世界史 (講談社現代新書)


うん,どこまで正鵠を射ているのかは知らないが,↓あたりがまあまあ面白かったですよ。

ヨーロッパでは祭りや冠婚葬祭の宴会を居酒屋が担うようになり,同時にそこが農民のコミュニティセンターとなった。日本では,農村,また都市でも,祭り・冠婚葬祭の酒を自宅以外では,神社・仏閣で飲んでいたのではないだろうか。神社・仏閣が,民衆のコミュニティセンターの機能をもったとしたなら,イスラム圏や中国と類似している。
ヨーロッパで農村への貨幣・商品経済の普及が阻止されなかったのは,ヨーロッパに大中小さまざまな権力が分散して,絶対的権力が不在であったからである。……それに対して,非ヨーロッパ文明圏では,農村に貨幣・商品経済の普及を阻止できる強力な中央権力が存在していた。
ヨーロッパでは,上流階級は近代社会になるまで,外で飲食することはほとんどなかった。王侯・貴族は自らの邸宅で宴会を催し,芸人や売春婦を呼ぶこともできた。彼らが外で飲食し,エンターテイメントを楽しむようになったのは18世紀,とりわけ封建制が崩れたフランス革命以降の事であった。客人を自宅で無償接待する精神は,むしろ非ヨーロッパ文明圏でより多く,より長く存続した。これは貨幣・商品経済の農村部への浸透がヨーロッパとくらべて弱かったことで説明がつく。