老女マノン・脂粉の顔 他四篇 (岩波文庫)

老女マノン・脂粉の顔 他四篇 (岩波文庫)

 

 うん、こりゃ面白いや。

・脂粉の顔→ガイジンのヒモになることを誘われつつ、目黒競馬場!でライヴァル女のキャピキャピトークとビンビン化粧に反応。いーじゃん

・墓を発く→これも一つの大正デモクラ。社会派として、心理小説として、殆どロシア文学みたいなのだ。あるいは叙事詩のごとき。

・巷の雑音→ミシンの安い報酬。子供のエプロンを白い蛆虫の残骸と見る。貧民窟から這い上がるのも足の引っ張り合いばかり。セックスワークの面接。媚を売らねば生きられぬという怒り。

・三千代の嫁入→家父長制のもと、暗い家から暗い家に入る。いかに対照的に見えようとも。夫は初めから他に情婦あり。

・ランプ明るく→続編。出戻り。煤けたままのランプさながら。宗教に帰依し、鬼が仏になった父。これはこの国の明治の醜さだ。

・老女マノン→いくばくでも色を売る感じなしに、女らしい外のすべての本能を持つということそれ自身が困難なのだ。老衰に入った女の化粧鏡! もちろん、この映画とはドヌーヴのそれではないが。