昆虫図 (1976年) (現代教養文庫―久生十蘭傑作選〈4〉)

昆虫図 (1976年) (現代教養文庫―久生十蘭傑作選〈4〉)

 

 本棚の奥に寝ていた本の埃をぬぐい、ほぼ40年ぶりに読む。おぉ、現代教養文庫なり。

南部の鼻曲がり→キングサーモンアメリカで、ドッグサーモンが日本なら、シルバーサーモンは日系米人なのだそうな。

ハムレット→ふみゅ、正に芝居がかった心理劇? 性格学の胡散臭さとどんでん返し。

予言→なんだか100年くらい前の映画を観てる感じの宿命論。

春雪→道灌山下の教会、大塚から高円寺まで焼かれた空襲、中神の飛行機の墓場、大森海岸沖の俘虜収容所、そんな東京。

西林図→缶詰の鶴肉の正体は、南朝鮮の臭雉子とはこれいかに。

母子像→サイパン慰安所を切り盛りする美しすぎる母に殺されそうになりながら、思慕の念を募らせる息子。凄い話!

虹の橋→不幸な女が、もう一人の不幸な女と入れ替わろうとする。戸籍が新憲法のお蔭で曲がりなりにも相対化された時代。老母(なり替り)の介護にそれなりの生きがいを見出すのは何だか現代的。ブロバリンで性的頂点に達したとかいうのは、いかにもアプレゲールだけど。

雪間→洒落たお話だけど、これもコワイ話。中編に膨らませてもよかったのでは? 箱根の坂は恐ろしいのだ。

骨仏→機銃掃射で撃たれた妻を窯で焼くという、那覇壺屋育ちの男。磁器の白さをだすには、人骨の骨粉を微量に混ぜるんだと。