上海にて (集英社文庫)

上海にて (集英社文庫)

 

 那個天皇東西…質問自体、天皇制をどう思うか、などということではなくて、より積極的に「どうしようと思っているのか」というのである。

協力者に対して、遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス、という、この嫌味な二重否定、それっきりであった。その余は、おれが、おれが、おれの忠良なる臣民が、それが可愛い、というだけのことである。

私は……近代日本の優等生、秀才ぶりと、その優等生性と秀才さ加減のもつ進歩性と、進歩性であると同時にそれが他に対しての反動となるという、この、ほとんど宿命的とさえ言いたくなる二重構造にぶつかり、そこで立ち往生してしまうのである。