日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)

日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)

 

 ひとまず、万葉から元禄までの日本文学を西洋や中国との比較で述べる。

仏教美術の黄金時代(天平期)は、日本語の抒情詩(万葉集)のほとんど全く仏教に関わらない時代でもあった。

・この国の文化の歴史は9世紀以降とそれ以前とは全く異なる。しかも、中国では権力と思想の死闘がありえたが、日本では最澄空海も国家権力と融合した。

・「伊勢物語」の歴史的意味は、男女関係を中心とする伝統的な現世享楽主義の意識化であり、理想としてのその最初の表現であった。

万葉集に頻出する「共寝」の他動詞表現は、古今集では自動詞的な「夢」に変わる。

・「うつほ物語」への高評価。のちの「源氏物語」と「今昔物語」への伏線として。

 ・「今昔物語」には肉体的性的にほとんど禁忌がなく行動的で、「源氏物語」の強い禁忌と対照的。

 ・室町時代禅宗の日本文化への大きな貢献の一つは、同性愛詩文の発達である。

・西洋文学史は古典時代から戯曲および叙事詩を中心に発達し、散文の小説が現れるのは18世紀以降である。日本文学史は抒情詩と小説を中心に発達し、14、15世紀に戯曲を加えた点で大いに異なる。

 ・戦国時代に武士道はなかった。元禄文化の中で、侍がもはや戦う必要がなくなって初めて生まれた。

なんて辺りが刺戟的で、後編も読みたくなった。