悪としての世界史 (文春学藝ライブラリー)

悪としての世界史 (文春学藝ライブラリー)

 

 イブン・ハルドゥーン、ジャバルティ、マルクス司馬遷と相異なる歴史家たちの価値支柱から説き起こす。

ヘブライ人は被圧迫のコンプレックスにとらわれて世界宗教の母胎を築き、フェニキア人は神聖文字をコスモポリタンな道具としてのアルファベットに転化させた。 

ギリシア人の学問がある程度合理性や普遍性をもちえたのは、本体に対する職人・商人・傭兵などのマージナルな人間集団という関係によるのではないか。

十字軍の残虐行為は、イスラム文明への劣等感の蓄積があった。キリスト教徒にとって、ユダヤ教徒もまた、第五列と映った。

香料貿易より重大なのは、ポルトガルが平和なインド洋世界に悪質な異文明敵対を持ちこんだことだった。

パクスブリタニカは一義的には軍事的抑圧秩序であり、資本主義的世界市場は、結果的にそれに付随してあらわれた。

個人がアッラーとの契約によってアイデンティティを保証され、偶像によらず、他の個人たちと対等にかかわり合うのがイスラムの考え方である。