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茨木のり子詩集 (岩波文庫)

茨木のり子詩集 (岩波文庫)

 

 怒るときと許すとき「女たちは長く長く許してきた/あまりにも長く許してきたので/どこの国の女たちも鉛の兵隊しか埋めなくなったのではないか?//女のひとのやさしさは/長く世界の潤滑油であったけれど/それがなにを生んできたというのだろう?」

木の実「ミンダナオ島/二十六年の歳月/ジャングルのちっぽけな木の枝は/戦死した日本兵のどくろを/はずみで ちょいと引掛けて/それが眼窩であったか 鼻腔であったかはしらず/若く逞しい一本の木に/ぐんぐん成長していったのだ」

一人は賑やか「一人でいるのは 賑やかだ/賑やかな賑やかな森だよ/夢がぱちぱち はぜてくる/よからぬ思いも 湧いてくる/エーデルワイスも 毒の茸も//一人でいるとき淋しいやつが/二人寄ったら なお淋しい/おおぜい寄ったなら/だ だ だ だ だっと 堕落だな//恋人よ/まだどこにいるのかもわからない 君/一人でいるとき 一番賑やかなヤツで/あってくれ」

 部分「日に日を重ねてゆけば/薄れてゆくのではないかしら/それを恐れた/あなたのからだの記憶//ああ それから/もっともっとひそやかな細部/どうしたことでしょう/それら日に夜に新たに/いつでも取りだせるほど鮮やかに/形を成してくる/あなたの部分」

茨木のり子の詩は、良質のシンガーソングライターの曲のように、迫真と遊戯性とエロスに溢れていて、生後90年を経てもなお瑞々しいのだった。ってか、東伏見に住んでたんかよ!