早世が惜しまれる梶村氏の著作が手軽に読める。実に解りやすい文章。今こそ読まれるべきだ。☆★

・極東民族大会には,朝鮮人の,主として在外活動家が大量に参加しており,日本や中国よりも格段に多勢だった。朝鮮共産党は1925~28年しか存在しておらず,45年まで回復していない。

コミンテルンは,遅れた朝鮮の運動に対してはかなり高飛車な指導をした。深刻なことに朝鮮人の側も,コミンテルンの誤ったイメージが国際主義への信頼を通して浸透してしまった。

・例えばアメリカが強引に直接軍政をしき,朝鮮人民共和国を否定していったとき,もしソ連側に共和国をもりたてていく意志があれば,直接にそれを公認するという形ではないにしても何かやれることがあったはずだ。

・「アメリカの悪い奴がやる戦争にひきずりこまれるのはゴメンだ。日本は平和国家だ。しかし北の侵略軍も悪い」こんな発想に安住していられる無神経さ。戦後民主主義の意味が定着するのは朝鮮戦争後ではないか。

・貧農出身の朴正煕の主観のなかには,農民の苦しみを救済するという儒教的な指導者意識みたいなものがある。クーデター当初には,四月革命の継承者と自認さえして,貧農層の幻想をぐっと体制側にたぐりよせようとする役割を果たしている。