昭和芸能史 傑物列伝 (文春新書 937)

昭和芸能史 傑物列伝 (文春新書 937)

 

 美空ひばりについて,喉を緊めたり緩めたりする伝統的邦楽の手法と,喉を開放するベルカント唱法の両方に秀でていたために,聞く者に不安感や暴力性を呼び起こした,そして,ひばり自身も二つの方向に引き裂かれた←コレは私のまとめなので,やや外れているかもしれないが,重要な指摘と思われる。

長谷川一夫の章における「二枚目」の定義。女の情熱を受けとめる役。肉厚でセクシャルで,人妻の立場も世間の義理も放り出させるような…というのは,正直,この役者の映画やドラマを殆ど見たこと無いのだが,納得的かも。

渥美清を<除け者>と見て,その<荒ぶる魂>で時々する讐(あだ)の怖ろしさを感じる民俗・宗教的見解も興味深い。

軍事教練や兵役がイヤなのに,満州や蒙古へのノスタルジーを隠さないという森繁久彌のいかがわしさは私もずっと感じていた(知床旅情とか死ぬほど嫌いだしヴァイオリン弾きなんか間違っても見ることはあるまい!)のでマイナスの意味で共感。

森光子も正直好きな女優ではあり得ないが,母モノが未婚非婚離婚女優や男性遍歴お盛んな女優によって演じられ,むしろ水商売の女性の方が母性が強いなんて指摘は面白い。

んで,空気な藤山一郎センセ…(・_・;)

そもそもコクミンエイヨショー縛りってどーなんだ>そもそも,スポーツ選手ごときと一緒くたにされてこいつらは満足なのか?? ま,筆者の洞察力・文筆力には敬服したので,他の芸能者の評も読んでみたいものである。☆