高熱隧道 (新潮文庫)

高熱隧道 (新潮文庫)

 

 第三黒部発電所をめぐる戦争中のトンネル掘り屋のオトコたちのお話。読み進めるうちに,撤退を許されない空気感が,フクイチやらリニア建設やらに重なってくる。当てにならぬ学者,推進する親会社(その背後のクニ),盲目的忠誠で突き進む現場労働者…。切断された人体を組み合わせる作業の描写は何ともグロイ。泡(ほう)雪崩って初めて聞いた。しかし,根津という人物は屍を踏み越えてトンネルに憑かれた男なのだな>ある意味労働英雄? で,工事中止かと思われたのを引っ繰り返すのが「御下賜金」ってのがおぞましすぐる。これで貫通バンザイで終わったらどうしてくれようか…と思ってたら,逃げるように現場を去ったという結末はさすがというべき。★