黄金の枝を求めて―ヨーロッパ思索の旅・反戦の芸術と文学

黄金の枝を求めて―ヨーロッパ思索の旅・反戦の芸術と文学

 

 スペンダーによれば,ピカソの想像力を衝き動かしたものは,むしろ間接的な「セコハンの体験」にほかならなかった。…文明に襲いかかる災厄に対して,直接的体験を持たず,セコハンの経験という悪夢のなかに生きるほうが,現実の経験よりもはるかに恐ろしいのだ。…「セコハン体験」論に孕まれる問題提起的な要素は,ソンタグ流の行動的現地主義のアナクロニズム的な印象を際立たせるだろう。

第一次世界大戦戦没者墓地を訪ね歩きながら,筆者の親族の記憶を絡め,様々な作家や詩人の作品を織り込む。フランドルの罌粟の花には黒十字が現れるなんて何の因果だろうか? 生きている間に答えが与えられなくても,問いかけるのをやめてはならない,という筆者の詩が印象的。☆