評論集 滅亡について 他三十篇 (岩波文庫)

評論集 滅亡について 他三十篇 (岩波文庫)

 

武田泰淳の評論を読むの初めてだが, 意外にも読みやすかった。「三光」を手記として発表した軍人の文章が「罪を認めたと他人に認めさせたい,欲望の方が先にちらついていた」なんて辺りは鋭利だ。「水滸伝」と「金瓶梅」を対比させながらも豪傑や淫女の横行を「非情な強力の支配」と礼賛したりするのも真骨頂だろう。魯迅文学の暗さや,谷崎とドストの対照も意表を突かれた。井伏や吉川,そして三島への批評も面白い。屈原の憂愁幽思,法然の絶対平等は丁度母の死と重なって腑に落ちた。☆☆★