日米〈核〉同盟――原爆、核の傘、フクシマ (岩波新書)

日米〈核〉同盟――原爆、核の傘、フクシマ (岩波新書)

 

 もはや目も眩むような欺瞞と破局への途。筆者の文体は(悪い意味ではなく)美文だなあ。しかし,プレート境界の静岡県に使用済み核燃料を貯めるとか狂気の沙汰としか思えんのだが…。☆☆★

・米屈指の核特殊専門チームCMRTが福島にいち早く派遣されたのは,核分裂生成物が広範囲に拡散した状況下における「救護の不可能性」を米政府が強く意識していたためだ。…CMRTが作製した放射能マップが示す赤色やオレンジの高線量エリアはまさに,核爆発事象の非人道的な帰結である「救護の不可能性」を如実に示している。

・日本にとっての核密約とは,「核の傘」の枢要な一角を構成する米軍核搭載艦船の通過・寄港を確実に担保しながら,米軍側の軍事的ニーズを満たすとともに日米核同盟体制の円滑な運用を図り,国民の間に広がる反核感情を統制しようという,「同盟管理制作」だったのではないだろうか。被爆国政府の言う「非核」の虚構は深く,それは「日米核同盟」の岩盤を形成する歴史上の役割を果たしたのかもしれない。

・「原発ゼロ」を推進しながら,核燃サイクルを推進すれば,「プルトニウム大国」の抱える核物質の在庫量はさらに増えるではないか。核爆発の惨劇を経験した被爆/被ばく国として本来なら,もっと責任ある原子力政策を国際社会に示すべきではないのか。…ひょっとしたら,日本の政治ガバナンスそのものが機能不全に陥っているのではないのかーー。

・仮に日本が,日本製の原発から出る使用済み核燃料の再処理をインドに認めたらどうなるか。インドは再処理で取り出したプルトニウムを,IAEAの査察下にある原発でしか利用できない。それでも日本や米国との協定で再処理が自由にできるようになり,大量のプルトニウムを保有するようになれば,もともとインド国内であまり採れない希少なウランを兵器開発に集中投下できる余地がでてくる。

・ダニエル・ポネマン曰わく「早期かつ頻繁に原子力政策に関する方針を変える可能性を残しておき,後に選挙で選ばれた人たちが調整できるようにしてほしい」…だと。