カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男 (朝日新書 106)

カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男 (朝日新書 106)

 

 ゴルバチョフエリツィンをこき下ろすのは当然としても,プーチンをどう思ってんのかは知りたかった。まぁ,筆者のエレナさんは序文を読む限り,如何にもなリベラル西欧白人そのものの上から目線なので,どうなることかと思ったが,カラシニコフという素材はそんなヤワなキャラクターではなかったのが素晴らしい。カラシニコフ銃は正式にはAK47というのだな。その特長は,トカレフが「銃のなかに塵ひとつ入り込まないように,すべての部品をぴったりとくっつけるという原理を採用し」たのに対し,「部品と部品のあいだに隙間を設け,まるで一つひとつが宙に浮いているかのように設計した」のだった。もっとも彼自身は「自分の発明品が人々の解放に使われたと耳にすると大きな誇りを感じる。反対にそれが他者を抑圧することに使われた場合には,当然のことながら心が張り裂ける思いだ。私の銃はしばしば誤った使い方をされているが,それに対しては責任を感じていない,というのも,自分の銃の設計に関すること以外に私が決定権を持ったことなど一度もなかったからだ」という考えの持ち主だ。一介の技術屋として,成功するさまは,当人の個性とともに相当に魅力的だ。☆☆☆

中尉は,自動(オートマチック)の語源はギリシア語であり,「ひとりで動く」というのがもともとの意味だということを教えてくれた。これを銃器に当てはめれば,引き金を引いた状態で,停止することなく弾を打ち続けることを意味する。これこそが短機関銃の最大のメリットなのだ。

突撃銃と軽機関銃を同一の規格でつくるのは容易なことではない。二つの銃が異なるコンセプトに立脚しているからだ。それに,突撃銃の耐用年数は軽機関銃の二分の一である。そうは言っても,これらの銃を共通のベースに基づいてつくり上げることは不可能なことではない。まらそこには大きなメリットもある。銃の規格統一は,大規模かつ確実な経費削減につながり,銃器の取り扱いを容易にするからだ。

私も会社の株式の一部を取得したが,一切の配当金を受け取ることも経営権を持つこともなかった。私は,半世紀にわたり私の名前がついた銃をつくり続けてきた企業の「オーナー」の仲間入りも果たせず,工場の民営化によって資本家になれたわけでもない。