フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

 

 三重入れ子構造が最初わかりにくく,人造人間と主人公の名前が同じなのが拍車をかけて取っ付きにくかったんだけど,文章そのものは極めて平易。それもそのはず,筆者僅か20歳前後の作品で,出自→シェリーやバイロン(どちらも全く読んだこと無いけど)の社交界という逆ベクトルの語り口に慣れてしまえば,つまりは人間に限りなく近い創造物とは文明と野蛮の変数だということになる(非ヨーロッパ世界やアイルランドへの差別的言辞!)。

でもまぁ,配偶者を要求する怪物ってのはユニークだよな~。そして,いっときはそれを創造しようとする主人公が女性の構造を生真面目に研究しようとするくだりは噴くゎ~。最後のフランケンの叫び「人間すべてがおれに罪を働いたのに,なぜおれだけが犯罪者呼ばわりされるのだ?」「おれを憎むがいい。だがおまえの憎しみなど,おれが自分を見つめる気持ちとは比べようがない。人を殺したこの手を見る。どうやって殺すかを考えたときの心を思う」は,まるで死刑囚のアンソロジーのようなのだ。☆☆☆